。☆゜星空゜☆。


あたしは下を向いて翼の車に乗った。


翼の顔を見ることができなかった。


顔に傷があるからじゃない、翼を裏切ったことに深く罪悪感を感じた。


「流奈、帽子取れ」

「嫌だ、髪がすごいことになってるから」

「いいから取れ!!」


翼が怖かった。


いつもの翼じゃなかった。


あたしは帽子を取っても下を向いたままだった。


翼があたしのアゴに手を当てて顔を持ちあげた。


「……っ!」


翼が目が鋭くて、あたしはふたたび目を反らした。


こんな翼の表情を見るのは初めてだった。


「なんでだよ……、ひでぇじゃんか……」

「……」

「流奈!」

「ごめん……」

「お前、なんで守ってくんねぇの?なんでだよ!俺の言ってることって、そんなに難しいことか?」


すごい剣幕で怒る翼にあたしは言い返した。


「……わからないよ、翼になんか」


本当は今日、単車に跨ったのに、翼を思い出して家に帰ろうとしたんだよ?なのにヤツらが待ち伏せしてたんだ・


「翼にはわからないよ!あたしの気持ち」

「そんなんわかりたくねぇよ!言っただろ?」

「翼だってそうだったでしょ。もっとたくさん悪いことしてきたでしょ?翼に言われたくなんかない!」

「……そうか。俺にはわかんねぇや……、ごめん」

「抜け出せないんだよ!もう遅いんだよ!!一度、踏み外した道は戻れないんだよ」

「流奈……、帰っていいよ!降りろよ」


あたしは翼を睨んだ。


「わかったよ!バイバイ」


あたしは翼の車から降りて走った。


本当は一緒にいたかった。


素直に「ごめんね」って言いたかったのに……。



< 60 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop