*あたしの好きな人*
それからあたしは雄太の部屋を出た。
玄関で雄太はあたしの手を掴んだ。
「もう遅いから、送るよ。」
「え?いいよ。大丈夫!」
「でも‥‥危ないから。」
雄太はそう言ってあたしの手を
離さなかった。
「これで柚に付きまとうのは最後にするから‥‥」
「ちょっと‥‥付きまとうって‥‥雄太、あたし雄太のことうっとうしいとか思ったことないよ?雄太のことは好きだったから‥‥だからそんなふうに思わないで?自分のこと責めたりしないで。ね?」
雄太はまた下をむいて悲しげに笑った。
「雄太、ありがとう。バイバイ。」
あたしは雄太に手を振った。
雄太は何も言わず、
あたしを見つめるだけだった。
あたしは玄関を出て
駅に向かって歩き始めた。
「柚!!」
突然後ろから呼ばれ振り返った。
「柚!ありがとな!せめてこれからは友達として仲良くしよーぜ?」
そう言った雄太の顔は
とても優しい笑顔だった。
雄太はあたしのところまで走ってきた。
「嫌か?」
あたしは思いっきり首を横に振った。
「全然!むしろあたしなんかと友達でいてくれるの?」
「あったりまえだろ!‥‥‥柚、がんばれよ?うまくいくように‥‥ってまだ思えねぇけどさ、いつかそう思えるように俺も頑張るから。」
あたしの目から、また涙が流れた。
「うぅ‥‥ゆ、う、た〜‥‥ありがとう。」
「泣くなよ。じゃーな!また新学期な!」
雄太はあたしの頭に手を置き、
ポンポンとしてから帰っていった。