*あたしの好きな人*

あたしはまだ少し痛みの残るお腹をさすりながら教室に戻った。




「柚!大丈夫だった?何か言われたの?」



奈々が心配そうな顔をして聞いてきた。

あたしは奈々に言おうか迷った。


迷って迷って‥‥‥









「ううん、大丈夫。ただ龍とはどういう関係なのか聞かれただけ。ただの友達って言ったら帰ってったよ。」




殴られたことは言わなかった。


これ以上奈々に心配させるわけにいかないし。






「そっか。あれ?なんか柚、ほっぺた片方だけ赤いよ?」




ヤバイ。



「‥‥あぁ、なんかかゆくて。」



バレるかな、こんな意味不明な言い訳。




「なにそれ。かきすぎだよ!」

奈々は笑いながら言った。



よかった。何も感付いてない。






「あ、早く食べなきゃ昼休み終わる!」




あたしはこの話題をもう終わらせたくて、残りのお弁当を食べ始めた。




この日、結局龍と祐介さんは来なかった。



あとから聞くと、4時間目からずっとお昼も食べずに二人して机で爆睡してたんだって。





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