*あたしの好きな人*
「柚ちゃーん!」
いきなり廊下から呼ばれて振り返ると、
横山がいた。
「柚ちゃん柚ちゃん?今日暇?ちょっと帰り付き合ってよ。」
残念ながら暇じゃありません。
あたしは龍と帰るんです。
「悪いけど、無理。」
「なんで?桜井龍と帰るから?」
「そう。」
「あの人はやめたほうがいいよ。」
は?なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ。
「べつに関係ないでしょ。」
「そんなこと言わずに俺にしとけって〜。」
横山はふざけて笑った。
「何わけわかんないこと言ってんの?」
「はは。ごめんごめん。でも桜井龍はやめとけって。」
「だから関係ないって言ってんじゃん!」
あたしはつい声を張り上げてしまった。
横山は一瞬驚いて、そして少し悲しげな顔をした。
「でも‥‥やめたほうが‥‥」
しつこいな。
早く戻ってよ。
あたしは無視した。
「柚ちゃん。とりあえず今日は帰り‥‥」
「うるさいなぁ!ほっといてよ。」
そう怒鳴ると、やっと諦めたのか
横山は肩を落として帰っていった。