*あたしの好きな人*
「ごめん。こんなことになってしまってからじゃ遅いんだけど。やっぱり最初から言っとくべきだったよな。」
横山は本気で申し訳ない顔をした。
「あんたは悪くないよ。むしろ助けてくれて‥‥ありがと‥‥」
「なぁ。俺、柚ちゃんがこんな目に合うのは見たくない。きっとこれからも続くと思う。そんな嫌な思いしてまで桜井龍と一緒にいたい?もうやめようよ。‥‥‥俺、柚ちゃんが好きなんだ。俺なら幸せにしてやれると思う。‥‥‥‥俺と付き合わない?」
え?
何?
あたし、横山に告られた?
でもあたしは‥‥龍が‥‥
龍が好きなの。
でも、龍を好きだと辛いめに合う。
「‥‥‥うそ‥‥‥何これ‥‥」
部屋にあった全身鏡に、偶然あたしの姿がうつっていた。
あたしの制服は汚れていて、足はアザだらけ。
そして、顔には傷があり血が滲んでいる。
頬は軽く腫れ、目の周りは少し青かった。
口の横も切れている。
「‥‥嫌。嫌、嫌、嫌ー!」
あたしは手で顔を抑えて隠し、
うずくまって泣いた。
そんなあたしを、
横山はやさしく抱き締めた。