*あたしの好きな人*
「う、う‥‥‥グズ‥‥嫌‥‥こんな顔‥‥嫌ぁ〜‥‥」
横山はさらに強くあたしを抱き締めた。
「柚ちゃん、大丈夫だから。すぐ治るよ。俺が守ってやるから。」
心が弱ってしまっているあたしは、横山のそんな言葉に、つい横山に抱きついていた。
横山はそれがあたしの返事だと解釈したのか、またさらに力を強くした。
「グズ‥‥ねぇ、苦しいよ?」
「あ、ごめん!つい‥‥」
力を弱めた横山が、あたしの顔の目の前にきた。
横山は急に顔を近付けた。
唇が触れるまであと数センチ。
「待って!ダメだよ。あたしは‥‥」
「俺と付き合って。」
「‥‥‥あたし‥‥でも‥‥」
「いいよ。桜井龍が好きでも。すぐに忘れさせてあげるから。」
あたしはしばらく間をおいて、
静かに頷いた。
でも、あたしは横山を好きじゃない。
また好きじゃない人と付き合うの?
あたしは高校生になって、
決意した思いから、
簡単に逃げてしまった。
この日から、
横山はあたしの彼氏になった。