*あたしの好きな人*
「ゆ、雄‥太‥‥あたし、わからないんだ。正直、あたし自分の気持ちがわからない。龍が好きなの。でも‥‥‥」
「俺のことも気にはなってくれてる?」
あたしは、静かに頷いた。
好きかって聞かれると、
縦に首は振れない。
気になるかって聞かれると、
ちょっと戸惑うけど、
縦に首は振れる。
「じゃぁそれでもいい。言ったじゃん、これから好きになってくれればいい。」
「そんなの、あたし都合のいい女になっちゃうじゃん。横山‥‥あ、雄太に悪いよ。」
「俺がいいって言ってんだから。俺は柚が好きなんだ。」
そう言って雄太はあたしを抱き締めた。
それに答えることがまだできない。
優柔不断なあたし。
はっきり答えることができない。
最低だ。
「柚がまだ迷ってるのは分かってるから。‥‥‥‥夏休みじゃん。いっぱい遊ぼうぜ?」
「‥‥うん。わかった。」
「よし!じゃぁ〜‥‥今日はもう帰るよ。また連絡するから。」
雄太は立ち上がって部屋を出た。
玄関で、バイバイしたあと、
雄太は急に振り返り、
一瞬だけの短いキスをした。
あたしは唇が触れてしまって、
びっくりして後退りした。
「ごめんな。またな。」
雄太はなぜか謝って、
帰っていった。