*短編* それを「罪」と囁くならば
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「由奈、お前何で昨日来なかったんだよ?」
静かに本を読んでいた時、突然問われた。
由奈は本から視線を外し、その声の主を見上げた。
目の前には金髪と整った顔立ちの男。
由奈は自然と眉間に皺を寄せた。
「……ヒカル、顔近づきすぎ」
「俺は今、由奈に質問してんのー。答えてよ」
「だからその整った顔を、余計に近づけるな。アンタに好意を寄せる周りの女の子にやりなよ」
目の前の男…ヒカルの頭を叩くと、呆れたため息をつく。
叩かれたとこを抑えて拗ねたような顔をするヒカルを見たあと、由奈は周りの女子をそっと見る。
ヒカルに見とれてる中には由奈へ嫉妬心剥き出しの視線もあった。
「で? 何で来なかったの?」
「何でもいいでしょ。アンタに関係ない」
「おいっ。ちゃんと答えろよ」
「うるさい」
由奈はどんなに問われても答えはしない。
昨日《彼》と一緒にいたことなど、絶対に言える訳がないのだ。
何も知らない目の前の男にはもちろん、誰にも知られてはいけないのだから。
「ちぇっ。何だよー」
由奈とヒカルは高校時代の同級生。
たまたま席が隣でなんとなく話してただけ。
今でもヒカルが一方的に話しかけてきて、それを由奈が適当に返事するくらいだ。
本当にモテて多くの女子が好意を寄せる中、ヒカルが由奈にしか話しかけない理由は嫌でもわかっていた。
――自分に好意を寄せてくれていると。