真夏の白昼夢
ナツキは握っている右手にかすかに力を込めた。
「ずっと平気だったのに、なんだか今日の夕暮れは寂しいな」
俺はナツキの方を見た。
遠くを見るようなナツキの目。
俺は堪らなく切なくなって、底無しの絶望感に飲まれる。
この時間を終わらせたくない。
離したくないよ、ナツキ。
いくら俺が望んでも、ナツキには届かないの?
胸が詰まって、息がしずらい。
「夕日、綺麗ね」
少し潤ませた瞳にオレンジの夕日を映して、ナツキは言う。
俺は頷くことすら出来ずに、ただ繋いだ手を強く握った。