真夏の白昼夢

俺の腕の中で、ナツキは弱々しく言った。


「今夜だけ、愛して良い?」


それは俺に言ったのか、以前の婚約者に言ったのか分からなかった。

だけど俺は答えるみたいに、ナツキを抱きしめる腕に力を込めた。


俺の胸から顔を上げたナツキは、微かに瞳を潤ませている。

その瞳に吸い寄せられるかのように、俺はナツキにキスをした。

何度も何度もキスをした。

口づける度に、ボロボロと剥がれ落ちてゆく俺の理性。

全身がナツキを求めてしまう。

そしてそれはナツキも同じだった。
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