真夏の白昼夢
「あたしね、逃げて来たんだ」
鈴の鳴るような細い声で、ナツキは言った。
「何から?」
「過去と、罪から」
話そうとしている。
そう感じて俺は体勢を戻した。
腕枕を通した俺にナツキは擦り寄る。
「婚約者ね、死んじゃったの。翌月には結婚するはずだったのに」
ぽつりと放たれたその言葉は、部屋の空気を少し重くした。
「どうして?」
ナツキはわずかに躊躇う仕草を見せ、意を決したように答える。
「事故で。彼はあたしをかばったの」
語尾が震える。
俺は何も答えられなかった。