真夏の白昼夢

夏場は朝から気温が高い。
じっとりと汗ばんだ額を拭い、ぼんやりと天井を見つめる。

不意に沸き上がる違和感。

部屋が静かすぎる。

ハッとして飛び起き、寝室を出てキッチンに向かう。

いつもならそこに、テキパキと食事を用意するナツキが居たのに。

がらんとするキッチン。

代わりにテーブルにはラップをかけられた食事が並んでいた。


「……ナツキ」


慌ただしく俺はバスルームやトイレのドアを開け、ナツキを探す。


「ナツキ!」


だけどナツキはどこにも居ない。

寝室に再び戻り、がむしゃらにクローゼットを開け放つ。


「ナツキ!」


寝室の隅に置いてあったナツキのボストンバッグが無くなっていた。
< 117 / 126 >

この作品をシェア

pagetop