真夏の白昼夢

俺は冷静になろうと、立ち上がってソファーに移動した。

なんとなくクッションを持ち上げた時、俺はハッとした。

ナツキは確かにここに居たんだ。

夢なんかじゃない。

持ち上げたクッションからは、ナツキと同じシトラスの香りがした。


ナツキ。

君が居ないと物足りないよ。

世界が色褪せて見える。


俺はクッションを抱きしめ、声を押し殺して泣いた。

ナツキが居たら髪を撫でて慰めてくれるのに。

そう思うと余計に涙は止まらなかった。
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