真夏の白昼夢
「心臓、ドキドキしてる」
俺の腕の中で、ナツキはポツリとそう言った。
そうして俺の背中に腕を回し、キュッと力を込める。
「ヒトの鼓動って、愛しいものね……」
ちょうど俺の胸の辺りに耳を寄せ、そう呟くナツキ。
俺は優しく右手でナツキの髪をとかした。
この子の言葉は、普段はとてもあっけらかんとしているけれど。
不意に呟く時、どうしようもない寂しさを含んでいるように聞こえる。
寂しいことがあったのだろうか。
そして未だ抜け出せていないのではないか。