真夏の白昼夢

抱きしめたまま、ナツキの髪の香りをかぐ。

シャンプーの香りとともにシトラスの香りが鼻腔をくすぐる。

腕の中にナツキが居ることに、不思議なほど違和感がない。

ナツキはもう一度腕に力を込めた。


「婚約者ね、あたしが殺したんだ」

「え……?」


殺したって?
もしかして、それで逃げて来たっていうのか?

戸惑う俺を、ナツキはクスッと笑った。


「嘘よ」

「なんだ、驚いたよ」


ナツキはクスクスという笑いをおさめ、また続ける。
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