真夏の白昼夢

身支度を整えて玄関に向かう。

ナツキは玄関まで俺の鞄を持って見送ってくれる。

すっかりお決まりになった、出がけのキス。

柔らかく温かいナツキの唇の感触を確かめる。

不意に込み上げる愛しさと、離れがたい気持ち。

俺はナツキを抱きしめた。

ナツキは優しく俺の身体を離して、ふんわりと微笑む。


「いってらっしゃい、貴弘」


その声があまりにも優しくて、泣きたい衝動に襲われる。

だけどぐっと堪えて俺も笑う。


「行ってきます」


俺はもう一度ナツキにキスをした。
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