真夏の白昼夢

「ただいま」


俺は玄関から声をかけた。

だけどその声はむなしく廊下にこだまする。

いつもならナツキのスリッパの鳴き声がかけてくるのに。

部屋の中はシンとしていた。

瞬間、ドキリとした。

まさか……ナツキが出て行った?

俺は靴を脱ぎ捨てて慌ただしく部屋に向かう。

まさか、そんなはずはない。

だって契約の日まであと一日あるんだから。

嫌だ、ナツキ。

嫌だよ。
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