真夏の白昼夢
「気にしないでね。随分昔のことだから」
笑いかけるナツキ。
複雑な気持ちだ。
ナツキにとっては悲しい過去の話。
だけど俺に本当の過去を話してくれた。
それが嬉しかった。
「料理は好きよ。家事はどれも好きなの」
気の強そうな見た目によらず、家庭的だということは知っている。
だけどナツキが家庭に入る姿は想像できなかった。
ナツキの持つ独特の雰囲気のせいなのか。
謎が多いせいなのか、それは分からないけど。
いつかは誰かの妻となり、家庭に入るのだろうか。
思うほど、胸が握り潰されるようだった。