真夏の白昼夢

緩やかに日が暮れてゆく。

ナツキの手を取って歩く、マンションまでの帰り道。

アスファルトに伸びる二人の影がくすぐったくて、愛しい。


「小さい頃はね、夕暮れが嫌いだったの」


不意にナツキが静かに話し出す。

朱色に滲み始めた光に、ナツキの白い肌が染まる。


「どうして?」

「だって友達と遊んでいても、日が暮れたら帰らなきゃいけなかったもの」


幼いナツキを思い浮かべて俺は微笑んだ。


「楽しい時間が終わっちゃうって、悲しくなっちゃって」


俺達の影がゆらゆらと揺れる。
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