リューベル王物語
それは、入道雲のとてもまぶしい夏の日のことだった。
「ねえ、リク!リク!」
「ちょっと待って。」
「だめぇ!待てない!飛んで行っちゃうよ。」
「なんだよう。」
林の入り口で、
基地に使うための木ぎれを探していたリクが、
めんどうくさそうに返事をする。
「みて!光るトンボだよ!」
ピノアの指さす先には、
確かに光るトンボが
夏の日差しの中を
悠々と飛んでいた。
「おお!すごい!」
リクとピノアは、
しばらく並んで立ち、
そのトンボが飛ぶのを眺めていた。
「なんていうトンボなの?」
「うん、あれはねレッサー・エンペラーっていうんだ。」
「れっさあえんぺら?」
「そう、『小さな王さま』っていう意味だよ。」
「わかった、トンボの王さまね!」
「うん、めったにいないからね。」
「待て~、ちっちゃい王さま待て~!」
リクはそんなピノアの姿を
微笑ましく見ていたが、
あることを思い出した。