リューベル王物語
ピノアは銀色に光るトンボの方へ走って行く。
しかし、
リクがその後を慌てて追いかける。
「ピノア!そっちはダメ!ピノア!」
リクは、
さきほど木ぎれ探しをしているときに、
スズメバチの巣を見つけていた。
ピノアが走ってゆく方向は、
そのスズメバチの巣のある方向だった。
ピノアが刺されたら、
大変だ。
リクはピノアを追いかけて走り出したが、
ピノアが必死な形相でリクの方へ向かって走ってくる。
ピノアの後ろを、
どう猛なスズメバチが追いかけていた。
「ピノア!!走れ!」
リクがピノアの横について走る。
ピノアには返事をする余裕もない。
しかし、
いくら一生懸命ピノアが走っても、
男の子のリクにとっては遅すぎた。
だめだ、追いつかれる。
そう思ったとき、
すぐ右手に草むらの茂みが見えた。
「あそこに行くぞ。せーのっ!」
そう言って、
2人は山のように盛り上がっている、
こんもりとした茂みに飛び込んだ。