リューベル王物語
リクはなるべく頭をあげないようにして、
スズメバチが飛んで行ったのを確認しようとする。
スズメバチの姿は見えなかった。
リクはまだ、
心臓がどきどきしていた。
喉はからからなのに、
額からは汗の筋が何本も垂れた。
こんなところに汗が出るなら、
その分冷たい水になって
自分の喉を潤してくれたらよいのに、
と思う。
リクは、
まだぜえぜえと
肩で息をしているピノアを見た。
「こわかったか?」
そうリクが声をかけると、
恐怖から解放された安心感からか、
ピノアは突然ひっくひっくと泣き始めた。
「泣くなピノア。もう大丈夫だ、ハチはどっか行ったよ。」
草むらは、
そこだけリクとピノアを囲むように生えていて、
中に座っていると回りは一面緑の壁になる。
リクは「これも秘密基地みたいだ」と思っていた。