リューベル王物語
【影】
リクとピノアの2人が、
こうして「秘密基地」にやってくるのは何年ぶりだろうか。
住宅地の脇を南北に通る歩道に沿うように林は続いている。
その歩道を北に歩き、
その道の切れ目よりさらに北へ行くと、
秘密基地につながる林の入り口があった。
子どもの頃は、
そこまで行くのにとても遠い道程を感じていたが、
大きくなった2人にとっては、
思ったよりもあっけない距離であった。
林の景色はもちろん昔のままではなかったが、
秘密基地は、
ほぼ原型をとどめていた。
リクとピノアは、
顔を見合わせて、
自分たちが小さい頃作った秘密基地に入ってみた。
まっすぐに立つ二本の木の幹間を利用して、
木ぎれや萱で屋根を作り、
三方を囲む壁もちゃんと残っている。
無論構造は稚拙であったが、
小さな子どもが作ったにしては、
いい出来じゃないかと
リクは幼少時代の自分を称えたい気分になった。