リューベル王物語
第1章 「萌芽」
【卒業式】
「結局ティアには、チェス以外で勝つことができなかったよ。」
「ああ、リクにチェスで勝てなかったおかげで、この先何度も悪夢を見そうだ。」
王立アカデミーの卒業式、
2人の若者がアカデミーの中庭を歩いていた。
「おれは万年2位の笑われ者だったんだ。悪夢ぐらい見てくれないと立つ瀬がない。」
リク・バーデンバーグが自嘲気味に笑うのを見て、
もう1人の若者がリクの肩をぽんぽんと叩く。
「誰も笑ってないだろう。こう見えても実はほっとしているんだ。おまえに抜かれないために必死だったからね。しかし、これでお互い勉学での競争は終わりだ。そして、おれは士官学校へ進む。だが、おまえは本当に浪人するつもりなんだな、一体何を考えているんだ?」
こちらの若者はティアイネ・ビワコフと言って、
国中のエリート達が終結するこの王立アカデミーで、
常にトップの成績を取り続けた男である。
通称ティアと呼ばれるこの男の存在のお陰で、
リク・バーデンバーグは常に2位の成績に甘んじていた。