リューベル王物語


お灸を据えられた若者達がぞろぞろと部屋を出ると、入れかわりにいかついおでこをした大男が入ってくる。



フズナの副官、カノヴァ・レムドビッチである。



カノヴァは、かれこれ十年以上フズナの副官を務めている。



その風貌は、ひと目見た者の誰もが怯えるほど、凶悪な空気を漂わせている。



その凶悪な印象は、常人離れして突き出たおでこも一役買っていた。



部下たちは、これにあだ名をつけて、「カノヴァ・デコビッチ」などと呼んで面白がっていたが、無論本人を前にそれを口にする者は一人もいなかった。



「お呼びでしょうか」



どすの効いた声の大男を見上げてフズナが命じる。



「すぐに伝令を飛ばせ。文面は朝言うた通りでよい。あの学生どもは、鳥かごじゃ」



鳥かごというのは彼らの隠語で、利用できる時がくるまで、飼い慣らしておくというほどの意味である。



しくじりを咎めたてて、破門をちらつかせ、破門しなかったことを恩に着せてここぞの場面で捨て駒として利用するのは、彼らの常套手段であった。


< 37 / 38 >

この作品をシェア

pagetop