ホットレモンの憂鬱
真愛の存在…、知らなかった訳じゃないんだ。
名前は知っていた。
経営学部のむさい男共の間じゃ、ちょっとした話題だったから。
優しくて、明るくて、可愛くて、彼女にしたいって。
素朴な感じだから、すごいモテるとかじゃないけど、癒し系だって。それが真愛のことで。
ただ…、顔は知らなかったんだ…。
次の日、講堂でその姿を発見した時は、何故だかえらく感動した。
お調子者で人気者の上島と常に一緒にいて、同じく人気者の修も混じって徐々に親しくなっていった。
よくよく話せば、みんな同じマンションだった。上島は隣の居酒屋でバイトしてて、修のバイト先はその隣のカラオケボックス。
意気も合うし、レポートを一緒にやったり、暇さえあればそれぞれの部屋に押しかけ騒ぎまくる。
いつからか、名前で呼び合うようになった。
だけど、ここ1ヶ月くらい、誘ってもくれない。
『彼女、いるんでしょ?』
真愛の口から言われたくなかったんだ、そんなこと。
俺…。好きだからさ、真愛のこと。
しかも、眉尻下げて悲しそうにさ…。
俺と真愛って、…結構いい感じだったんだけどなぁ…。
懐かしいな…。