ホットレモンの憂鬱
お好み焼きパーティーん時だってさ。
『大樹っ、ひっくり返して!私がやると崩れそう』
『どれ?』
大きく膨れ上がった生地を見事返すことに成功。
『さすがー。頼りになるね』
とかさ…。
さりげなく俺を立ててくれたり。立ててたかどうかは別として。
夏の終わりに海が見たいって、みんなで行った時だって…。
佇む俺の隣にちょこんと座り込んでさ、波打ち揺れ動く海をずーっと眺めてたよな。
『また来たいなぁ…』
淋しげに言うから、砂に埋まる真愛の手に、俺の手の平を重ねて。
『また来ような?俺、車出すよ』
そう俺が頬を緩めると。
嬉しそうに微笑んだ顔…、今でも脳裏に浮かぶよ。
俺と来たかったかどうかは別として。
1か月前、また来たいって言っていた海に連れ出した夜だって、寒くて真っ暗で。
『全然、海が見えない』
なんて膨れてたけど。
ちょっといい雰囲気だったと思うんだけどなー…。
あの時、なんで俺…。好きだって言えなかったんだろうな。
もう、あの頃みたいに戻れないのか。
もし戻れるんだったら、彼女になってとか…。
俺は贅沢言わないから。
だから、せめて笑ってて欲しいんだ。
そんな蔑むように、俺を睨まないでさ…?
その視線が、俺の弱り切った心臓を貫きそうで、すっごい苦しいから。
前みたいに笑い合って、普通に話しが出来るだけでいいんだ。
きっと、広がった傷口が縫い合わさって綴じて行くから。
これ以上突き刺さると、本気で痛い…。