ホットレモンの憂鬱
2.想い
1ヶ月振りに訪れる、真愛の部屋。
ピンポン…。
何の感情のないチャイムが部屋から聞こえる。
「大樹、遅いぞっ!」
ドアが開けられ、廊下を覗く修が苛立った様子で俺を迎える。
「お前も?彼女どうしたんだよ?」
「別れた」
あっさりと言いのけた修に、素っ頓狂な声が出た。
「はぁ!?何で?」
「思ってたより面白くない女だったから。それよりお前は、ラブホじゃないのか?」
しらっと俺に話しを振る修の後ろで、じたばたと隠れようとする上島を睨み付ける。
「…てめぇ、喋ったな!?」
「あはっ…、つい…」
口端を引き攣らせ、居間の隅に後退る。
俺は靴を脱ぎ捨て、ストーブの燃える炎とテーブルの上でグツグツ煮えたぎる土鍋の熱で暖まった、真愛の部屋に上がる。
「大樹ってば、そんな怒んなくてもよくない?」
「別に怒ってねーよ」
「嘘だ!絶対怒ってるし」
「怒ってねーって!」
俺の顔色を伺う上島に、ぶっきらぼうに返事をする。
「ごめん…」
自棄に素直な上島の態度に、堪らず吹き出した。
「何だよ急に?もういいよ…」
俺の気持ちを知ってる癖に、あまりにも木村の事を話題にし過ぎるから、ちょっとお灸を据えてみた。