ホットレモンの憂鬱
俺は、新藤 大樹(シンドウ ダイキ)。
何の変哲もない、大学1年の19歳。
春に田舎から出て来て、現在大学の近くで一人暮らし。
半年前から週に4日程、夕方から22時まで本屋でアルバイト。
学力はそこそこの、至ってそこらにいるような普通の大学生。
んで、このムカつく女。
木村 里枝(キムラ リエ)。
ムカつくことに同じ大学で、この女から逃れられそうにない。
事の始まりは、1ヶ月くらい前。
大学で、同じ学部の修(オサム)と食堂で昼飯を食っていた時。
『大樹は彼女作らないのか?』
カツ丼のカツを箸に挟んだ修が俺に言った。
『は?別に…』
『…もったいない。俺と違ってモテるのに』
根拠のない一言を述べ、一口卵が絡まるカツを頬張る。
そう言う修は、最近彼女が出来た。
っても、入れ代わり立ち代わりで、何人目の彼女だかわからない、節操なし。
俺よりお前の方が確実にモテるくせに、こいつは何を言うか。
『…大樹くんっ!』
そこに木村がやって来て…。
『あたしと付き合ってください!』
って、かわいらしく頭を下げた。本当にかわいらしかったのはこの時だけだ。
『…は?』
意味わかんないし。
木村は、夏に開催された大学のミスコン1年の部で、最優秀賞を見事勝ち取り、美人で有名だったが、話したことは一度もなかった。