ホットレモンの憂鬱
「ダイ、…キモい…」
白けた目をして俺を見下ろす上島。
「え…?何でお前がいんの?」
ここは、広い広い本屋。
「本買いに来たからじゃん。ダイ、さっきからニヤニヤしてキモいよ。思い出し笑いってスケベな証拠だよね」
確かに、幸せに浸りながらダンボールを広げていた。
そんな俺に、冷たい目線を振り落とす。
「…うるさいっ」
「で…?盛んな感じ?」
「な、お前に関係ねーよっ」
「あぁー、その様子はまだなんだ?1週間経つのに、ダイって案外とろいね?」
「あーっ、わかったからもうどっか行けっ!仕事の邪魔だ」
「さっきからニヤニヤして全然進んでないくせにっ。大丈夫、ダイで2人目だから、まっちは初めてじゃないから安心しなよ」
「…それはそれは、余計な情報ありがとう。じゃあなっ」
上島を隣の列に追い出して、ダンボールを片付ける俺。
やっぱ、あいつ悪魔だな。
前の彼氏とか、俺で何人目とか。
んなの、聞きたくないんだつーのっ。
比べられたくないし、考えたくないから、少し臆病になっているだけ。
…好きだから。
本気で好きだから、手が出せないんだよ。