ホットレモンの憂鬱
訳がわからない俺は、茶色に染められた自分の髪をくしゃくしゃに、掻き回した。
目の前で頭を下げ、長い黒髪を揺らす女を、不審そうに眺める。
『いいんじゃない?大樹は彼女いないんだし。良かったじゃん、彼女できて』
修はパチパチと手の平を叩き合わせた。
『…なっ、勝手に決めんなっ!欲しいなんて言ってねーよ』
『いいしょ、美人さんだし。ポイント高いって。付き合っちゃえよ。付き合うのオッケーだって、木村さん』
修は親指と人差し指で丸を作って見せた。
…バカか、お前っ!?
オッケーじゃねーよ!全然!
口を開け放し、他人事のように事の成り行きを眺めている俺は、何の言葉も発することが出来なかった。
なぜなら、有り得なさ過ぎて…。
普通…、人の付き合う女を勝手に決めるか?
そんな修が言った、余計な一言を聞いた木村は。
『ほんと?わぁ~嬉しいぃっ。今日からよろしくぅ』
と、俺にぴとっと抱き着いて来た。
あまりの香水臭さに、俺はそのあと、カレーライスを半分も食べられなかった。
どういうわけか、付き合うことになってしまって。
そのあと、毎日の様に。
タイプじゃないから。
好きじゃないから。
嫌いだから。
好きな人いるから。
割とはっきりと断り続けているのに…。
話しなんか聞いちゃいない。
…そんな感じで、今に至る。