ホットレモンの憂鬱
「…冷たい、よ?」
「ん…」
「頬っぺも…」
「ん…」
「…耳だって…」
「ん…」
順を追って、冷たい風にさらけ出している俺の体に手の平を当てて行く真愛。
ぎゅっと抱きしめられる俺の体。
ふわふわと柔らかくて、まるで雲の上を歩いているみたいだった。
「…ごめんっ。大樹…。ごめんなさいっ」
「ん…」
「…ごめん。ごめんね…、ごめん…。大樹、好きっ…。ごめんなさいっ…」
泣きつく真愛の背中に、感覚を失った俺の腕が回された。
「俺のこと…、信じてくれる…?」
「…んっ、…信じる…」
「もう…。嫌いって、言わない…?」
「…言わないっ」
「俺から…。離れて、行かない?」
「…うん。ずっとっ、側に、いるっ…」
「…俺も、ごめんな?ハッキリしない男で…」
泣きながら縋りついて、俺の耳元でしゃくりあげて、声を出す真愛。
少し体から離れて、俺の目元から溢れる涙を親の腹で拭い取る。