ホットレモンの憂鬱

俺の顔に近いて来て、短くて甘いキスを振り落とす。

冷えて凍り付いた唇が、一瞬にして解けていく。


離れた真愛の頭を手で押さえ、もう一度、重なり合った唇。


俺だって、2度と離さないよ…。



涙を流して店先で抱き合う俺達を、滑稽にして行く人の群れ。

そんなのどうでもいい。


笑われたっていい。


真愛がいてくれるなら、苦じゃないから。

ずっと、側にいて…。



「…帰ろ?寒いよ…?」

「ん…、真愛…?」

「何…?」

耳の奥を擽る、真愛の生暖かい吐息。


「帰ったら…、温めてよ…?」

俺の胸の中で小さく頷き見せた真愛。


真愛…?


体の髄まで冷え切ってるから、ちゃんと温めてくれよ…。



End.

2009.3
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