ホットレモンの憂鬱
ようやく22時、業務終了の音楽が流れた。
手早く着替えを済ませ、小走りで通用口へと向かう。
「おつかれっした~」
「おぉ…、お疲れ~」
他のバイト連中とすれ違い様交わす挨拶は、手っ取り早く簡単に終わらせ階段を駆け降りる。
車に積もった雪も下ろさず、素早く乗り込みエンジンをかける。
吐いた息は車の中だというのに真っ白だった。
普段する暖気運転も、今は煩わしいだけ。
すぐに走り出した車の助手席に置きっぱなしにされた白い四角い箱。
冬だから、車の中は天然冷蔵庫。
っていうか、しばれてんじゃないか?
来る前に、並ぶまでの勢いで行列が出来ていたケーキ屋で購入した苺たっぷりのホールケーキ。
…真愛は苺が好きだから。
こんなものしか思いつかない俺の頭…。
ありきたり過ぎて、びっくりさえもしないだろうな…。