ホットレモンの憂鬱

その笑顔で、俺もなんでもなかったかのように笑ってられるよ…。


「はい、ホットレモン。ケーキには合わないかな?」

「いいよ」

手渡されたホットレモンを一口含む。

心まで温める気持ちになって、ほんとにあんなに苛立った思いがすーっと溶けていった。


「プレゼント…、用意してなくてさ…」

躊躇いがちに言い出した俺の台詞。

「…あるよ、ここに」

ニコッと笑って指の先。


砂糖の塊、クリームの上にいるプレゼントを抱えたサンタクロース。


「このサンタさんはどんなプレゼント持ってんのかな」

とか、言うか普通?何だよそれ、かわいいだろ。


拍子抜けした俺は、だいぶマヌケな顔しているんだと思う。


「…さぁ、何だろ。真愛なら何が欲しい?」


そうそう、最初から聞けばよかったんだよな。

なのに…。


「私はこれで十分だよ」

板チョコを摘み取って携帯のカメラに収めていた。
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