ホットレモンの憂鬱
「あれ?ダイと木村さん?何だ、ダイってばその気ないみたいなこと言ってて、結構ラブラブなんじゃない。どっか行くのー?」
意味深な笑みでニマニマしながら、上島が俺を見る。
「これからぁ、ラブホ行くのぉ~」
って、誰がだよっ!!黙れ!
「なんだー、うちらこれからまっちん宅で鍋なの」
ねーっ?と、隣でじぃーっと、俺を見据える真愛の腕を取る。
「ちっ、…違う、違うっ。こいつが勝手に言ってんの!!」
「…だから?」
少し怒ったような声で、俺に掴まれた腕を振り払う。
「そんな照れることないのに。あーっ、熱い熱い!」
上島は腕を上げ、手の平をぱたぱた扇ぐ。
「違うつーの…」
ふて腐れた様にそっぽを向いた俺に、突き刺さる真愛の視線。
耳たぶを弄りながら、俺はその視線に吸い付くように目を合わせる。
どことなく悲しそうな瞳は重なった瞬間、無残にも逸らされた。
「後で俺も行こーかな?」
隣で、なんであたしと遊んでくれないくせに!などと騒ぎ立てる女を無視する俺。
「ダーメ。その頃には何もないんだから」
「少しくらい残しとけよな」
「い、や、だ。さ、まっち、行こっ。バイバーイっ、せいぜいラブホでラブラブしてなよねー」
「だから、違うんだって!だー、もうっ!」
何でわかってくれないんだよ!
もどかしさに、俺はこれでもかと髪を掻きむしる。