ホットレモンの憂鬱
エレベーターが5階で止まり、俺の手から買物袋を受け取った真愛達が廊下へと降りた。
「あれっ、ダイは来ないの!?」
焦った様に俺を呼び止めた上島。
「先にシャワー浴びてから行くわ」
そう告げた俺の指は、“7”と“閉”ボタンを押していて、呆気に取られた上島の顔を遮断するかの様に、エレベーターの扉が閉まった。
タイマーで暖まった自分の部屋に上がり、ガスのスイッチに手をかけた。
脱ぎ捨てたダウンジャケットには、香水の移り香がしみついている。
臭いんだつーの…。
俺の体にまで臭いがしみついているみたいだ。
…はぁー、ほんと、…堪んねーよ。
と、独り言を呟いた。
あの顔は絶対…、付き合ってるって思ってるよな。
誤解だって言ってんのに…。
信じてくれないし。
そりゃ、常にべったりされてるから、誤解されても不思議じゃないけどさ。
何で…、こうなるわけ?
何かしたか俺…。
何もしなかったからこうなったのか…?
もう、やってらんねーよっ。
臭いがしみついた体を、これでもかと洗い流す俺って…。
悲し過ぎる…。