雅 - MIYABI - *さみ短2*

 「そなたの顔を見せてはくれぬか?」

 「それは…」

 戸惑っている私には構わず、手に持っていた扇子を取り上げられてしまう。

 数センチ先に凛とした私より二つ三つくらい年上な感じの貴公子

 私達は、暫くの間互いに見つめあったまま。

 「失礼。」

 「いえ。」

 何となく居心地が悪く、私は視線を外し長い廊下を戻り去る。

 この胸の高鳴りは…何?

 

 「雛さん、華さん、どうして教えてくれなかったのよ!!」

 「どうなされました?」

 雛さんは、今優雅にお花を生けているところ

 「どうって…」

 「八重様、具合でも悪いのですか?顔がお赤いですよ」

 「別に、元気よ ただ、胸がチクチクするのよ」

 「まぁ、お疲れなんですね」

 「疲れてはいないわ」 

 「お布団敷きますわね」

 「華さん、布団は敷かなくていいわ」

 「駄目です、熱は寝られるのが一番ですよ」

  チョキン チョキン

 「拝見されたのですね」

 雛さんは花を生けていた手を止め、真剣な眼差しで私を見据えるように座り直す。 

 「するつもりはなかったわ、けど…扇子を取られてしまったから」

 「私もお話の仲間に入れてくださいよ」

 「華、お茶を入れてきて頂けるかしら?」

 「…はい、姉様」

 華さんは、スッと腰をあげお茶くみの間へと。

 「帝様は、私とそう年は変わらないではないですか、私はてっきり…」

 「おめでとうございます」

 「あの…。」

 「宮殿の中で男女が顔を逢わせるということは将来ともにするという事でございます。私や、華のように幼少から遣えている者は別ですが。」

 「ちょっと、待って 私はこの時代で一生涯暮らすつもりはないわ」

 「それに、帝様も漸くお目覚めになられたようですしね これで、この国も安泰される事でしょう」

 「そんな、私やっと18になったばかりよ」

 「貴女がこの国へ来られる日が再びあるのかは存じません、ならばせめて今貴女がこの地に居る間だけでも帝様を、龍様を支えては頂けませぬか?」




 



   
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