雪と涙とアナタと~CASE1~
きっと彼は私の気持ちを知っている

そしてそれは口に出さない方が良いが思っている私の気持ちも、彼は知っているだろう

そうして彼も、自分がその気持ちを受け止める事が出来ないから何も言わない

ただ、その後ろめたさからくるモノなのか、今だけは出来る限りの優しさを私に与えているように思えた


「あ、雪……」


そうしていると、突然彼はそう小さく呟いた

今日は朝から曇り空

時々降っていた雪が、また夜になって降りだしたのだ

最初は小さかった雪の結晶が、徐々に大きくなっていく

彼の腕から離れた私は、その景色を見て「積るかな?」と呟いた


「積るかもな」


そう彼が言って空を見上げたので、私も同じように空を見上げた


< 13 / 19 >

この作品をシェア

pagetop