雪と涙とアナタと~CASE1~
卒業式が始まって1時間が経った

かなり長い間、私は席に座ったままだ

時々一礼するために立ち上がったりもするが、お偉いさんの話を聞いている間は意識が飛びそうになる


『それでは卒業証書授与』


式を進行する先生がそう言うのを聞いて、私は顔を上げた

何人もの生徒が、流れ作業に卒業証書を受け取るのを見つめながら、私はこれで1つ目の卒業を終える事が出来ると考えていた


「中村亜祐美」


そう呼ばれて、私は席を立ちあがった

ゆっくりと階段を上がり、壇上に立つ私

前の生徒が理事長から卒業証書を受け取るのを見て、私は一歩足を踏み出した

理事長の前に立つと、一礼する

理事長が私の名前を読み上げると「以下同文」と述べて、「卒業おめでとう」と私に証書を渡した

それを受け取り、一礼して私は席に帰る道をゆく

お偉いさんの前でも一礼し、角はきっちり丁寧に曲がって席に戻ると、私の頭の中にはもうあの人の事しかなかった

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