雪と涙とアナタと~CASE2~
「良いよ……」


私は一言そう呟いた

私の言葉の意味が分からず、彼は首をかしげながら「美月?」と私の様子を窺っている


「良いよ、私が一哉を私自身で慰めてあげる。私が紗江の代わりになってあげる」


そう言って、私は彼の唇にキスを落とした

私のファーストキスはそんな悲しいファーストキス

一方的な想いしかない、感情のこもっていないキス


「美月、お前……一体どうしちゃったんだよ!?」


唇を離した私に、開口一番彼は不思議なものを見るような目で私を見つめ返した

もう、そんな顔もどうでもよかった

彼をどうにかして満たしてあげたい

私の頭に残る想いはそれだけ

壊れきった心には、何も痛みさえ感じなかった

ゆっくりと再び彼の唇に軽くキスをし、首筋にそのまま唇を落としていく

彼の着ているカッターシャツに手をかけて、私はボタンを外していった


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