雪と涙とアナタと~CASE2~
カチャリと彼の部屋のドアを開けると、その部屋は彼の香りで満たされていた

いつも抱かれるベッドに倒れこむと、彼に包まれているような気がして涙が出た

私は今日でこの関係を終わらせる

ここで断ち切らなければ、もう私は底なしの沼に頭の先まで埋もれてしまう

だから―――――


「美月、来てたんだ」


少しして彼が予備校から帰ってきて、私はベッドから身を起こした

何も言わずに、私はただ彼を見つめ返していた

ジーっと彼を見つめて数秒

彼がベッドにやってくると、互いに何も言わずにそれは始まる

いつもそうやって

そこには何もなくて

ただ空虚としか言いようのない言葉の行為


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