雪と涙とアナタと~CASE2~
「今日は塾まで少し時間があるから、美月がどんな子にコクられたか聴きながら途中まで一緒に帰ろうかな~と思って」


ニッと笑いながら、彼女は私の机にかかるカバンを手に取ると、私に手渡した

亜祐美と話している間、私の心は平静を保っていられる

何よりも大切で、何よりも愛しい友達……いや親友だ

この日も、壊れかけた私の心を優しく包み込み、少しだけだが回復の方向へと導いてくれた

そう、きっと……

この日あんな事がなければ、そうしてその出来事以降一哉に会わなければ、私は新しい恋を始められるほどに、亜祐美に癒されていたのかもしれない

でももう、壊れきった私の心は、細かい粒子の様になって、誰にも直せない状態になってしまったのだ

そうなった理由は、亜祐美と別れて向かった自分の部屋

いつものようにドアを開けて、いつものように制服から私服に着替えようとしたときの事だった

いつもと違う違和感に、私は動きを止めてすべての感覚を使って周りを見渡した

すると微かに聞こえる甘い声

誰かの

誰か分からない女性の甘い声


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