雪と涙とアナタと~CASE2~
しかし、神様は私にはとてもヒドイ方だったようだ

それから数日して、次は彼の部屋から押し殺したような鳴き声が聞こえてきた

それは聴き間違えるはずのない彼の声

幼かった頃と比べると低くなった彼の声

私が好きでしょうがなかった彼の声

頭の中で2つの声がした


「気になるなら、そのベランダを越えればいいじゃないか」
「ダメ、これ以上傷つきたくないのなら、関わらない方が良い」


そんな2つの声が聴こえたけれど、私にとっては1つ分の声しか聴こえていないに等しかった

私は制服のまま、ゆっくりと窓際に向かうと、彼の部屋のベランダに降り立った

窓にはカギがかかっておらず、手を伸ばすとカラカラという音がして、滑りよく扉は開いた

その音に顔を上げる彼


「なんだ、美月か………」


そう言うと彼は手の甲でサッと涙を拭うと、弱々しく笑って「悪いけど、今日は1人にして?」と言った


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