雪と涙とアナタと~CASE2~
「俺失恋中なの……」


そう言って彼は私から視線を逸らした

何も言わない私に、彼は呟くように言葉を紡いでいく


「何か好きな人が出来たって言って振られちゃったよ……カッコわりぃーの俺」


自暴自棄に暗闇の中で笑う彼を見て、私の最後の砦

本能を囲っていた部分にひびが入った

パリッと言う音が本当に頭の中で聴こえた気がした

そうして次の瞬間には私は彼を後ろから抱きしめていた

もう後戻りはできない

いや、ベランダを越えた時点で、私はもう戻れない位置まで来てしまっていたのだろう

そう思うと何だか色々考えている自分がバカらしく思えた


「なっ、美月お前何してんの!?」


突然幼なじみに後ろから抱きしめられて、彼は戸惑いの声を上げた


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