指先からの恋物語




修さんに言われた赤い丸椅子に腰掛ける



優真もあたしの隣に椅子を持ってきて座る





「なんでアンタも座るの?」


「俺もたまには兄貴の
 仕事姿みたいし
 それに 勉強にもなるしな」


「ふーん」






それからあたしと優真は一言も喋らなかった



ただジッと


修さんの姿と

修さんの動かすハサミだけを見つめていた






・・・・カッコイイ







でも 何より一番感動したのは

カットの終わったお客さんが



「ありがとう」


って新しくなんた自分の髪型を触りながら笑顔で言っていたことだった








『ありがとう』





あたしも言われてみたい言葉



あたしもああいう風に

お客さんを笑顔にしてみたい




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