旦那様は高校教師
第1章 春(4月)
入学式
真新しい制服に身を包み、準備を整え私は振り返る。
「伯父さん伯母さん、行って来ます」
「あっ、ほたる。私は茜の入学式へ行くから、あんたは1人で行きなさい!」
「はい…」
伯母さんの冷たい口調はいつもの事。
気にしない気にしない。
私はそう自分に言い聞かせ、静かに玄関のドアを閉めると、思い切り外の空気を吸い込んだ。
スーーーッ。
ハーーーッ。
うん、今日もしっかりしなくちゃ。
私は幼い頃、両親を事故で亡くし、祖母が引き取り育ててくれた。
でも6才の時、祖母は両親の元へ旅立ち、親戚の家を点々としながら、最後に辿り着いたのが今の家。
祖母は私を大切に育ててくれてたけど、何処の家へ行っても歓迎はされず『何の為に生まれてきたのだろう』といつも心の中で考えていた。
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