旦那様は高校教師
「明日、迎えに来るから今日は荷物を纏めて、あの家にサヨナラしておいで」
「はい…」
「辛い思い出しかないかも知れないけど、ほたるが辛い思いをしたからこそ、俺達は結婚できるんだから…」
「はい…」
ほたるはずっと『はい』しか言わなかった。
辛い思いを沢山しても、ほたるの中では離れがたい気持ちも有るのかも知れない。
俺は、黙ったままのほたるの頭を優しく撫でた。
「其れじゃぁ行こうか」
薄暗くなった道を手を繋いで歩く。
ほたるは其れだけで顔を真っ赤にし、俺に見られないように下を向く。
恥ずかしがり屋なほたるが、可愛くて仕方がない。
誰の目にも触れさせず、家の奥に閉じ込めておきたい位、ほたるが愛しい。
こんなにも人を愛したのは初めてだ。
俺が俺で無くなりそうだよ…。