旦那様は高校教師
涙のわけ
「実はさ…南条が此処へ来てる事…前から知ってた」
先生は立ち上がり、鉄棒に寄り掛かる。
前から知ってたって、今日が初対面じゃないの!?
私には、先生と会った記憶がないです。
「去年の夏、公園の前を通りかかったら1人の女の子がブランコに座って泣いてた」
ブランコを指差した先生は、懐かしむような遠い目をする。
「声を掛けようかと思ったけど、その子は直ぐ犬を連れて帰ってしまった…」
そんなに前から、先生は私の事を知ってたの!?
しかも泣いてる所を見られてたなんて、恥ずかしぃ。
穴があったら入りたいよ…。
私は徐々に熱くなる顔を上げられず、先生の足に戯れつく次郎を目で追った。
「入学式で南条を見た時は驚いたよ。公園に居た女の子だ!!って」
あっ!あの時、先生と目が合った気がしたの…気のせいじゃなかったんだ!?
学校で私だと確信したから、先生は声を掛けて来たんだね。