旦那様は高校教師
「はい…。其れだけ…です…」
私は下を向き、小さな声で返事を返した。
「了解!!」
先生は鞄を持ちかえ、私の頭を軽く撫でる。
其れから優しい笑みを見せ、荷物を積み込んだ。
「次郎、また会いに来るからね。元気でね…」
玄関脇で嬉しそうに尻尾を振る次郎に、サヨナラを告げる。
此の家とサヨナラするのに、寂しさは余りない。
だけど、次郎とサヨナラするのは心が痛む。
「次郎…」
名前を口にするだけで涙が溢れ出す。
「俺のアパートから近いから、いつでも会えるよ」
先生は私の肩に手を回し、自分の方へ引き寄せる。